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オルタナ

ライブと映画

所感:downy『第三作品集』

CDの感想など 邦楽

初めて聴いたdownyのアルバムが「第五作品集」だっただけに、この「第三作品集」を初めて試聴した時はなんか地味だなぁと思って買うのを完全に後回しにし続けていたんだけど、最近ようやっと購入するに至り、さていざじっくり向き合って聴いてみると驚くほどに深化された世界が広がっていた。金属を煮詰めてどろどろに溶かしたものを完全に冷ました後、恐る恐るそれに触れてみた時のあのよそよそしいまでの滑らかな表面感と指先に吸い付くような冷たさを思い起こさせる一枚。

はじめに感じた通り、確かにこのアルバムにはいわゆる華というようなものはない。キャッチーな曲もなければ(そもそもdownyにキャッチーさなんてない)、他の4アルバムに比べて一聴しただけでガツンとインパクトを感じるような機動力のある曲もない。けど、一ヶ月かけて聴きこんでいくうちにどのアルバムよりも真っ直ぐに掘り下げられた楽曲の深みと内から染み出てくるような静謐さを感じるようになった。口の中を切った時に最初はぼやけていた血の味が時間が経つにつれどんどんと濃くなっていくような、そういう深みの出方だと思う。

個人的に、「   」→苒→月の流れを聴いていると、始まりと終わりの無い映画を観ているような気持ちになる。波の無いひたすらに真っ直ぐな海で、小さくなっていく月を見ながらゆっくりと沈んでいくような視界。針の先端のような細い月の光を眼に捉えたのを最後に、視覚も聴覚も意味を成さない真っ暗な海の中で温感だけが研ぎ澄まされてゆく。眼は閉じられない。意識は失えない。けれど息は続く。

教示的な歌詞はあまり書かないイメージのロビンさんだけに、月の「迷いなく 歩きなさい・・・。」という歌詞を見たときは胸が詰まる思いだった。そこにあるのは希望じゃなくて諦念だけれど、それでも歩くことをやめてはならない。亡びるようなふりももういらない。
このアルバムで一番好きな曲。