オルタナ

ライブと映画

『汚れた血』(1986)

ずっとみたかったやつを観ました。
”愛の無いセックスで感染する病、STBOが蔓延する近未来パリ”ってどんなエロゲだよって思ってたけど話の筋立てには全然関係なかったです。じゃあどうしてこんな設定したんだろうって思って調べてみたら、その当時ちょうどエイズが出現し始めた頃だったと知って納得しました。

青年期特有のひりつきというのでしょうか。錆びきった歯車を潤滑油なしでギリギリ回すようなそういう種類の痛みを感じた。自分もまだ青年期の真っ只中だから、あれはこういう葛藤でこれはああいう恐怖だ、とかそういうことの全部は理解できてないと思うけど、すり切れるように生きることの意義を提示されたように思う。これは”疾走”の映画だけど、”愛”とか”夢”とか言葉にしてしまえば陳腐なものが美しいまま生きたまま物語にちりばめられていると思った。
印象に残ったのは「(二人でバイクに乗ってる時に)ミラーで私を見てくれないなら愛はない。落ちよう。」と思って、本当に走行中にバイクから転げ落ちたリーゼに対してのアレックスの感想が「彼女は信心深いから」だったところ。どちらもとてつもない漢気である。

「愛してると言って。夢の中に持っていくから。愛してないでもいいわ。」「もし君とすれ違ってしまったら世界全体とすれ違うことになる」「俺の人生は乱雑に書き殴った下書きだ」とかの台詞や、アレックスの山吹色のジャケットとかアンナの深いブルーのガウン、部屋のタイルの白と黒、真っ赤な口紅、D.ボウイのモダンラブの曲とともに路上を走るシーンとか目に映る一瞬一瞬が鮮烈に記憶にしるしを付けていく美しい映画でした。