オルタナ

ライブと映画

『わたしを離さないで』

タイトル的にもパッケージ的にも全然好みじゃないんだけど、どこかでおすすめされていたのを思い出して期待値ゼロの状態で借りてきて観てみたら、意外と良かった作品。

端的に言えば“何かの目的で選ばれ集められ、世間と隔絶した場所で育てられた子供たちの行く末”というあらすじになると思うんだけど、この設定「エコール」そっくりだよね。映像のセンスの良さとか小学校の雰囲気とかも似ていて、少年時代のシーンはすごく既視感があった。

臓器移植用にクローンされた子供たちっていう設定、SFにしては現代でもありえそうな話だから観はじめてしばらくは戸惑った。もし臓器移植について何も知らない人が見たら、実際にあった話かと思ってしまうんじゃないかな。フィクションとノンフィクションの境界線がいささかあいまいだったのでSFにするならするでもう少しぶっ飛んだ時代設定にしても良かったのでは、と思いました。このお話のキモは命の重さとか生のありがたみとかそういうところにあるんじゃなくて、キャシーとトミーとルースの感情の揺れ動きにあると思うのでわざわざ裏に重たい設定を置かなくてもこの主題だけで十分に魅力的な作品になったと思う。(原作の意図には反してるかもしれないけど)

役者について言うと、少年時代を演じていた子供たちも青年時代を大人たちも全員素晴らしかった。特に主役のキャリー・マリガンのあの表情のバリエーションの少なさから感じさせる哀愁とか諦観とか親愛とか、まさに生唾ものであった。この人の出てるほかの作品も観てみたい!と久々に思わせてくれる魅力のある女優だった。