オルタナ

ライブと映画

岡村ちゃんのライブに初めて行ってきた話

去る11月5日に人生初の岡村靖幸ライブツアー、"愛の意味"に参加してきました。ということで早速ですが岡村ちゃんとの初DATE@大阪の感想をざっくりと記しておきたいと思います。

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19時を少し過ぎてから会場のライトが一斉に落ち、青いレーザーが幕の上に何やら模様を描き始めた。普段キャパ300~1000の箱でライブするバンドばかり追いかけている私はこの時点ですでに「金のかかってるライブすげぇ」と純粋に感動した。

会場が盛り上がり始めたところで幕が盛大に開け、岡村ちゃんとバックバンドの方々が登場。広いステージの前方にぽつんと佇む岡村ちゃんだったけど、自分がいた二階席にもスモークのようにじんわりとかつ目に見えて着実に忍び寄ってくるような圧倒的なオーラを感じた。

1曲目のヘアー(知らなかったのであとで調べた)はなんかこう、すごくえっちでした。セクシーでも官能的でもエロいでもなく、えっち。もっというとエッチではなくえっち。曲調やリズムは決してそんな雰囲気ではないのに人間というか岡村ちゃんが魂を吹き込んで歌うとこんなにも変わるものなのかとしょっぱなからヤられました。まぁ一番えっちだったのは手つきですが。

手つきもダンスの一部に入るのかは分かりませんが、今回私が岡村ちゃんのライブを見て最も印象に残ったのはダンスでした。かねがねベイベの方々から「岡村ちゃんはダンスがすごい!」という噂は聞いてはいたものの、「まぁせいぜい歌に添える程度でしょ」と思ってた昨日までの自分を殴りに行きたいくらい心底カッコいいと思えるダンスだった。パズルのピースをはめるようにぴったりとして無駄がなく、曲の一部であると同時に曲そのものだった。ひとたび岡村ちゃんが踊り出せば床もマイクスタンドも岡村ちゃんの体の延長線上にあるものみたいに感じられたし、シンガーソンガーというかダンサーというか、もう全部ひっくるめてのパフォーマーとして完全に"極み"の領域の人だった。

恥ずかしながら知らない曲もちょこちょこあったのですが、だからといって退屈するようなことは全くなく、岡村ちゃん自身のパフォーマンスはもちろんダンサーやバックバンドの方々のプロのエンターテイナーとしてのプライドや心意気、きっぷの良さが気持ちよく、ステージ全体を駆使したひとつのショーとしてすごく楽しかった。

ダンサーとしての魅力は上に書いた通りだけど、イケナイコトカイや弾き語りではシンガーとしての真髄をこれでもかって程に見せつけられた。岡村ちゃん、どう見積もっても50歳とは思えない若々しさ("たぶん23歳と何十か月で~す♡"とかいうあの言い方で正しく年齢が形容されてしまえる)だけど、こういう歌い上げる系の曲ではじっくりと熟成された大人の渋みをビシビシ感じざるを得ず、本気でうっとりと聴き惚れてしまった。特にステージが暗くなって岡村ちゃんだけにスポットライトが当たって伴奏なしで一人で歌うところ。息継ぎのタイミングで体の全部が吸い込まれてしまいそうなほど力強くて生命感のある歌声だった。

他に個人的に印象に残った曲は、家庭教師。ピンクのネオンに照らされて俯きがちにギターを掻き鳴らす岡村ちゃんは歌舞伎町の入り口で夜毎男女の修羅を歌うイケナイ愛の伝道師みたいだったのと同時に、世捨て人のような気高さも持ち合わせていてとにかく浮世離れしたカッコよさがあった。原曲の持ってる粘度の高いねっとりした雰囲気は残しつつも、どこか世の中の全てを達観したようなサッパリさもあって、アレンジで曲の性格まで変わるものなんだなと驚いた。

あと新参者的にあのロンからのだいすきの流れは「こんなにも贅沢に”岡村ちゃん”を体験しちゃっていいの?!」ってついドキドキしてしまったんだけど、当の本人達は今から名曲やるゼ!って素振りを全くしてないのが印象的だった。ヒットに頼らない姿勢と今の音楽に対する自信、そしてその自信通りのクオリティの楽曲を世に送り出すのってなかなか簡単に出来ることじゃないと思う。来年のニューアルバムも今から楽しみです。

曲中に投げキッスしたり指さししてくれることは会場で見て初めて知ったんだけど、絶対に私に向かって投げチューしてくれたシーンがありました(断言)。Twitterで検索したらその旨のツイートがたくさん出てきて笑いましたが、私含めてみんな勘違いしてるとかではなく、本当に全員にひとりひとりやってるんだと思う。そう思わせる力がある。岡村ちゃんの投げキスってこんにゃくゼリーみたいなブリンッとした弾力と目に見えて肌で感じられるような確かな実在感のある豊満なキッスですよね。素敵♡

あとカリガリファン的には白石さんが活躍されているのも観れて嬉しかった。あまり饒舌にお話されてるイメージ無かったんだけど、すごくMC回すのお上手なんですね。多少の綾小路君麿イズムを感じたり感じなかったりしたけど、白石さんの溢れ出る気品と聡明さが贅沢に堪能出来るまたと無い良い機会でした。

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計3時間超のボリュームたっぷりのライブだったけど、全編通して飽きを感じることがなく頭のてっぺんから爪先までずーっと楽しかったです。ツアータイトルが"愛の意味"ということで、岡村ちゃん愛の意味を教えてもらう気満々で来ていたけど岡村ちゃん自身「みんな、愛の意味知ってる?僕は調べても分からなかった。知ってる人いたら教えてくれない?」と何度も何度も客席側に投げかけていたので、このツアーは岡村ちゃんに愛の意味をご教授していただくツアーではなく、あくまで一緒にその意味を模索し共に考えるツアーだったのだと終わって数日経ってから気付きました。

私もまだまだ愛の意味は分からないけど、「世の中つらいことも汚いことも意味分かんないこともたくさんあるけど楽しく面白くサイコーにカッコつけて生きてこうぜ」ってのを客席含めた空間全体で教えられたようなライブでした。これからも弾んで跳んで寛大に生きていこうと思います。

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