オルタナ

ライブと映画

GOATBED"火花散る真夏の夜"8.23@心斎橋CLUB DROP

4か月ぶりのGOATBEDに行ってきました。ライブ自体は5月末に観たAstrobrite以来3か月ぶりだったのですが、このところ私生活が多忙を極めており、体感的には1年くらいライブに行っていない気分だったので少しばかり身を固くしながらの参加でした。

開演とほとんど同時に会場にインするという愚行を犯したため、ライブの楽しみの一つでもあるSEチェックが出来なかったのが心残りでしたが、入ってすぐにライブが始まったので走ってきたテンションのままするりと曲に滑り込めて良かったです。が、会場は超満員のうえステージが低く、縦に長いつくりのハコだったということもあり、最初から最後まで暗闇にぼんやりと浮かび上がる生首状態の石井さんしか見えませんでした。雄次さんに至ってはステージの端にいたのかな?と、終演後に打つこの文章にはてなマークを付けなくてはならないレベルで本当にどこにいるか始終分かりませんでした。分からなさすぎてまさか病欠か?と心配してしまったけど、下手でいつも通り粛々とお仕事に勤しんでらしたようで安心しました。ということでいつもは石井さんの一挙手一投足目玉の動きまで沼地を這う蛇のごとくねちっこくレポートしている私ですが、今回は姿が見えなかったためビジュアル的な部分は脳内補正多めでお送りしようと思います。

*

一発目は「ドゥリーダン!ドゥリーダン!」という荒野にぶっ放された銃弾のように威勢のいい遠藤さんのドスの効いた一声から始まり、BODY TO BODYリミックスでよりソリッドに雄雄しく生まれ変わったHard Liminalでの幕開けでした。これから何か始まるぞっていう汗っ気を帯びた茫漠な熱気が客席から立ち上るさまが目に見えるようでわくわくした。続くYing&Yangでは会場に青いライトを降らせ、一旦客席をクールダウンさせた後は心音さえも惑わすほどに挑発的でセクシーなHOLO GHOSTのイントロが流れ、個人的にはもうこの時点でクライマックスでした。この1~3曲目の流れは"今"のゴートのカッコいいところをギュッと濃縮した最高の序盤だったと思う。もうこれ何回書いたか分からないけど、赤い照明をバックに浮かび上がる石井さんの滑らかな肢体(今回は首だけだったけど…)のシルエットが毎度毎度目に脳に肌の真皮層までにジンジンと美しすぎて、このシーンを集めた万華鏡があれば買いたいくらいです。それくらいライブで聴く(見る)HOLO GHOSTが本当に大好きなので、正直これが聴けたらそれだけで来た甲斐があったなぁと毎回思っている。
その後はお久しぶりのYAMA-HAや最近の定番と化したFORM SWEET FORM、スリッポン、そしてMANISH FIEND。MANISH FIENDの時、遠目からでも分かるくらい石井さんがステージ上で右往左往していて、また機材トラブルでも起きたのかなと肝を冷やしましたが、真相は単なる歌詞忘れだったようです。遠目からでも分かるくらいしきりに床見たりステージ裾見たりiPadを見たりされており、遠目からでも分かるくらいニヤニヤしてらしたのですが、遠目からでも分かるくらいかわいかったです。後のMCで「歌詞は忘れてるわけではなくちゃんと覚えているが、いざ歌いだすと出てこないだけ」と弁明してたけど、きっと世間ではそれを忘れると呼ぶんですよね。

で、中盤あたりでWhodunit Howdunit Whydunit(配布新曲)を初聴きしました。「僕に突き刺さった深紅の君は儚い刃」という歌詞を筆頭にV系ド耽美の王道を地でいくようなリリックがちょくちょく飛び込んでくるのですが、サウンド自体はダンス色強めなNew Orderのようで(なんて表現すればいいのか分からない)、そのギャップが新鮮でした。スリッポンも初めて聴いた時はえらいキャッチーだなと感じたけど、この曲はこの曲でまた別種のキャッチーさがあって石井さんの引き出しの多さには驚かされるばかりです。
後半はドーナツ盤で特に好きなThe Optimist~とROSE&GUNをやってくれて嬉しかったけど、The Optimist~の中低音があんまり聴こえてこなくて歯痒かった。高音と低音の存在感が目立つ曲だけど、実は中低音が良い味を出していたということがよく分かりました。余談だけど、この曲を聴くと無性にブロック崩しがしたくなります。
ROSE&GUNはドーナツ盤でも特に好きとかもはやそういう次元ではなく、ゴート全曲の中でも5本の指に入るくらい好きな曲なので、イントロの時点ですでに感無量。ソウルフルにかつ真っ直ぐと歌い上げる石井さんの声は胞子のようにふわりと音に溶け込んだかと思えば時に石のようにずっしりと旋律に重みを残し、この人の歌声の持つ色や形や質量を表現力という簡素な言葉で片付けるのはいささか気が引けてしまう。そしてステージ上では恐らく雪原を駆ける白ウサギのように軽やかでキュートなシュージステップが披露されていたことと思いますが、いかんせん私の位置はほぼ逆最前だったので前の人の頭の隙間からサブリミナル的に覗く石井さんしか感知することしか出来なかったです。見たかったなぁ、シュージステップ。


あとはロケットベイベーのアレンジバージョンがカッコよかった。ライブで聴くのは初めてだったけど、よりアダルトな倦怠感に満ちみちており38歳の余裕みたいなものを感じました。9月のライブでアンガーとセットでUSBに入れて販売するそうですが、行けないので下唇を噛みまくっています。この日のMCで「CD出してもろくすっぽ売れねぇからそれならライブに来てくれた人にあげちゃおうと。ライブに一人でも多く来てくれたほうがいいから。」と言ってたけど、地方の民には交通費と日程調整という強靭過ぎる敵が立ちはだかっているので、1曲1500円くらいまでなら余裕で払うから是非とも配信もしくは通販に流すことも検討していただきたいです。

終盤は今ツアーのタイトルに引用されてるアンガーを演ったんだけど、聴いてるうちに心の底に滞留してる色んな感情がワッと込み上げてきて自分でも何が何だか分からないまま泣きそうになった。決して夏の終わりに感傷を感じるタイプではないけど、この日のアンガーは真夏の押してくるような黒い暗闇の中でやる線香花火にそっくりで、一つのものの最も鮮やかな時と褪せゆく時が互いに許しあって同居していた。色んな出来事が静かにライブハウスの暗闇に溶けていくような心地で、何かの始まりや終わりなんてのは、頭で考えるよりも本当はもっと穏やかでぬるくて優しいものなんだと思った。
アンコールではTwitterでの予告通りVOGUE MANをやってくれました。後ろから見てる限り、中盤から前方は始めからけっこうノってたように見えたけどVOGUE MANが始まると全員テンションのつまみを60°くらい右に回したようなノリノリ具合で、みんなこの曲大好きなんだなと微笑ましく思った。かくいう私も大好きで、やっとこさ素敵なパンピー認定を授けていただけたので、これでようやっと一人前のゴートファンになれたような面映ゆい気持ちでいっぱいです。

今回はダブルアンコがあり最後はde SLASHで幕を閉じましたが、VOGUE MANで完全に振り切れたはずの俺たちもこの曲がかかるとパブロフの犬にならざるを得ず、マリオの無敵スター状態を彷彿とさせるテンションの上がり方でもって応戦しました。結構本気で踊れない症候群は快方に向かってるのではないかと思う。

*

とまぁこんな感じの2時間弱で、本編でMCを全く挟まないアスリーティングスタイルのライブだったため時間があっという間に過ぎました。あと会場で貰ったフライヤーがフライヤーとは思えないくらいしっかりした紙質とデザインで、そういう細部の小洒落たところがゴートがゴートたる由縁だなぁと思った。MCにて「こんな厚いフライヤー見たことないでしょ?それだけ心がこもってるってことだから。」とはにかみとニヒルを足していじらしさで割ったような笑顔で仰られていたので、今後のフライヤーの厚さは要チェックです。