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オルタナ

ライブと映画

GOATBED"Re-birth gift of the price ratio"12.5@新宿ReNY

ライブ 石井秀仁
すっかり冬の季語として定着しつつある、石井秀仁バースデー(前)ライブに行ってきました。
チケットもばっちりと先行で手に入れ、準備も気合も十分すぎるほど十分だったのですが、東京の交通網をナメて行動していたため結局入場出来たのは開演後という悔しい失態を犯してしまいました。満員のフロアでの最後尾での観覧だったので、春の日の木漏れ日程度のさやけさでしかステージ上の二人を確認できなかったのですが、どこから見ようがどこで聴こうがゴートベッドは素敵であるということが分かったのでささやかながら感想を記しておきます。

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前述のとおり入場はおろか開演にも間に合わなかったので、開演後息も絶え絶えライブハウスに辿り着き、ロッカーに荷物を詰めていると突如ホールのほうからキャーッという黄色い悲鳴が上がり、程なくしてドッドッドッドッという太くて重たいビート音が響きはじめた。初めてライブが始まる瞬間を外から客観的に聞いたんだけど、死んだ人間が息を吹き返す瞬間ってこんな感じなのかなと思った。硬質で冷たいけれど確かな厚みと生命感のあるサウンドを鳴らすバンドだ、ということを場外から聴いて改めて強く感じた。無事会場に滑り込んでからはやはりちらちらとしか姿は見えなかったけど、それでも月光を浴びて輝く白百合のように艶やかで発光するような石井さんの美しさはありあまるほどに感知できました。雄仁さんは世紀末の歌舞伎町で暗躍する敏腕女衒のジョニー・ライドンを思わせるパンクスヤクザな出で立ちで、黒の総レースとレザーのスキニーを纏って黒猫のようにしなやかに動くお兄さんと二人でセットになって鮮やかに浮世離れしていた。

今回印象に残ったのは、OPENING CEREMONYとHOLO GOHSTのつなぎがそれはそれはカッコよくてイリュージョナルだったこと。思わず心の中でDJ SHU-G!と叫んでしまいました。石井さん真剣にDJの才があると思うので、他人のmixとかもどんどんやればいいのになと秘かに思っている。
HOLO GOHSTの照明は威嚇するような赤でザクザクとステージに切り込むようなやつが好みなんだけど、今日みたいなネオンピンクもこれはこれで色々な意味で様々な方面からエマージェンシーだな、と見惚れた。ライブに行く楽しみのひとつは歌い方・見せ方ひとつで一つの曲がこんなにも違った顔になるんだってことを知れることだと思う。ところでOPENING CEREMONYのバックの映像は何で人類進化の過程だったんだろう。家に帰って一息ついた今でも疑問に感じている。
あとは何度も言ってることだけど、ying&yangの2番を1オクターブ上げて歌うのが本当に好き。青白い光の中で細く優しく歌い上げる姿は氷上のシャンソン歌手のようで、モネの絵画のように完成されたあまりの優美さに見ていて聴いていて思わずため息が出る。まるで何かの啓示みたく意志的に差し込む白い照明を見て、聖書が読めない無学で愚かな民衆にも手に取るように神の美しさが分かるように、という理由で教会にステンドグラスが設置されるようになったという話を思い出した。あまりに美しいものというのは理屈や道理を踏み越えて否応なしにどんな人にも真っ直ぐに差し出される。

本編終了後、少し長いアンコールの間があって、お二人再登場。演奏したのはTHE ROLLING RUBBER BALLとジュンカンノネイロとRADICAL MATの3曲でした。ジュンカンノネイロの空間的に広がるサウンドが今回の円いライブハウスの造りとよく合っていて、演奏中は散らばった音の粒がきらきらと環状に広がるのが目に浮かぶようできれいだった。
そしてRADICAL MATではまさかのコーラスを要求され、DVD収録用に客席にマイクまで設置するという気合いの入りっぷりだったのですが、この曲はゲームの特典にしか入ってない曲なので私のような非ユーザーには歌えるわけもなく…。ノリノリの石井さんとは裏腹に客席はざわ…ざわ…という感じだったのですが、なりふり構わず演奏スタート。当然コーラスは聴こえるはずもなく「え?!歌えるよね?!」と慌てふためく石井さんはまるで生放送のために念入りに仕込んだサクラがここ一番のウケどころでぴくりとも笑わなかったときのお笑い芸人のような顔をしていて、少し心が痛んだ。

RADICAL MAT (No chorus ver.)が終わって二人がハケていく際、後ろのスクリーンに「今日はありがとう。皆さんに幸せな日々が訪れますように。」というニュアンスの英文が映し出されていて思わずジーンときた。その言葉を背に最後石井さんがお辞儀をして去って行ったあとに湧き起こった、真冬のアスファルトに落ちた陽だまりみたいな温かい空気感は忘れたくないなぁ。

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途中のMCで「来年はまだこういう感じでやっていくかな、再来年からは前みたいなGOATBEDの音に戻るかもしれないですね。」と、これから先もゴートを続ける意向のある言葉が聞けてすごく嬉しかった。私がゴートを好きになったのがちょうど活休が決まった時期で、こんなにも素敵な音楽にすんでの所で生で触れられなかったことをひどく悔やんだ。だから今こうして活動が再開されてリアルタイムで触れられることそれ自体が本当に夢みたいで、いつ終わってしまっても仕方がない素敵な夢の続きを暫定的に見させてもらっているような気分だったので、別段驚くようなことでもないこの発言にえらくびっくりしてしまった。自分の好きなものがいつまでもそこにあるとは思ってないし、思ってはいけないとも考えてるけど、こういう言葉を聞くとやっぱりいつまでも続いてほしいと願わずにはいられない。

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今日のライブは演奏中もMC中も石井さんがニコニコしていたのが印象的で、派手な反応こそ無かったかもしれないけど、お客さんもそれぞれ思い思いの形で音を楽しんでいたように思う。もうすぐ誕生日というお祝いムードと相まってか、いつもは金属的でクールに響く音にもほんのりと温かい空気がベールのように付随していて、注ぎたてのシャンパンみたいに淡く白く華やかに弾けていく祝福された空間と時間でした。

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