オルタナ

ライブと映画

digmeout ART & DINER x FLAKE RECORDS 8th Anniversary 9.26

去る9月26日、FLAKE RECORDSの8thアニバーサリーイベントに行ってきました。
正直に申し上げますと、このライブの1週間前までFLAKE RECORDSというものが何者なのかも全く分からなかったし、フレークといえば真っ先にシャケを思い浮かべるごく一般的な思考回路をしていた私でしたが、これからはきちんとレコード屋さんを思い浮かべようと思います、二番目に。(一番はやはりシャケ)

なぜシャケだかレコード屋かも分からない団体のアニバーサリーイベントという、わりと親密な雰囲気が漂うイベントに突如参加することを決意したのかというと、青木ロビン氏が人生2度目の弾き語りライブを行うことが1週間前に電撃発表されたからです。丁度何の予定もない日だったうえに場所は大阪、もうこれは行くしかなかった。アニバーサリーだろうがバースデーだろうがどこぞの他人の結婚式だろうが、ロビンさんが大阪で弾き語りを行うのであれば、それはもう行くしかなかったのです。

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というわけで行って来たのですが、ステージが低かったのとほぼ逆最前だったのが相乗効果を発揮して何も見えませんでした。本当に何も見えなかったので、ロビンさんがどのようなギターを弾いているのかもさっぱり分かりませんでしたし、もしかしたらステージではシルクハットから鳩が出て来ていたのかもしれませんが私にそれを確認する手立てはありませんでした。それくらい何が起こってるか全く分からなかったのですが、そのおかげで純粋にアコギの音色と歌声ただそれだけを吸収出来たように思います。
しかし何も見えない中でも感じられるロビンさんの気迫というか立ち上るオーラは圧巻でした。

出順はトップで、1曲目はdhalからかな?何ていう曲かまでは分からなかったしそもそもdhalかどうかも怪しいのですが、朝の森林みたいなしっとりとした爽やかさのある曲でした。お次はdownyから「葵」。ギター1本だけのはずなのに、バンド体制で演奏するときとなんら変わらない質量感と重厚感だった。そのずっしりとした重みに加えてアコギの弦が擦れ合うたびに起こる叫びにも似た金属的な響きが切り込むように曲に加わっていって、痛切さが更に増していた。葵を聴くといつも紙で切ったような細い傷が皮膚にとめどなく走っていくような細い痛みを感じるんだけど、カフェの暖かい照明の下でもその感覚は健在だった。
そこからちょっと順番があいまいなのですが、下弦の月(downy)、state of emergency(ビョーク)、終りの季節(rei harakami/細野晴臣)含む全7曲の演奏でした。
下弦の月は、もしロビンさんの弾き語りを聴きに行ける機会があれば絶対に聴きたいと思っていた曲の一つだったので、やってくれてとっても嬉しかった。アルペジオでのアレンジで弾いてたんだけど、その階層的にこぼれ落ちていく一音一音に手向けるように言葉を乗せて歌うロビンさんの声に心底胸を打たれた。原曲とはまた違った仕上がりで、一層この曲が好きになったのは言うまでもないです。

MCでは、「今日は沖縄から来ました。…いつも話はこれで終わってしまいます。」「普段はdownyってバンドで世界の終わりみたいな音を鳴らしています。」「むかし絵を習うために西梅田に住んでたんだけど、その時の女の先生がめちゃくちゃ怖い女の人だったから今でもそのせいで大阪の女の人が苦手、圧を感じる」や「バンドの時と違って完全に一人だから出来の良し悪しは全部自分の一人のせい」や「何か質問ありますか?」などdownyのライブではほとんど喋らないロビンさんが饒舌にお話していて、新鮮かつ微笑ましいかつ楽しかった!

個人的に一番印象に残ったのはビョークのカバーかなぁ。ビョークは少しだけ聴いたことがある程度で、今日の曲は聴いた事が無かったから家に帰って検索して初めて原曲を聴いたんだけど、こうも違う曲になるのかと衝撃を受けた。原曲と全く違うアレンジを入れてるとかキーを変えてるとかそういうことでは無いのに、言葉も旋律も完全にロビンさんのものになっていた。原曲の持ってる胃の底からじんわりと広がるような熱さはそのままに、ここまで違う表情をカバーで見せられるものなんだなと家でオリジナルを聴きながら思わず感じ入ってしまった。

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ライブは全部で2時間半ほどで終了しました。ゴッチや五味さんの弾き語りもロビンさんとはまた違う雰囲気でそちらもとても良かったです。ゴッチが出てきた時は、アジカンは中学生の時に当時出てたアルバムは全部聴き込むくらい好きだったし今のライブの曲も半分くらいは分かるだろう、と鼻息荒く臨んだのですが「君という花」しか分かりませんでした…。それでも中学時代のスピーカーの中のスターが今こうして目の前で歌ってるという状況はなかなか感慨深かったし、「君という花」はやっぱり私の好きな曲の一つです。

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憧れの音を聴けて嬉しいやら迫り来るノスタルジーやら会場の熱気やらがひとつになって微熱みたいな体温で浮かれて会場をあとにすると出口にロビンさんがいらっしゃったので、とても素敵でしたという旨を伝えると「37年間生きてきた中で一番緊張した!」と仰っていたのですが、そんな風には全然見えなかったしそもそも私の位置からは実際に物理的に何も見えなかった、というオチですが本当に堂々たるステージでした。
風はよそよそしくひんやりとしていたけれど、やわらかで温かい夜でした。

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