オルタナ

ライブと映画

downy2016『無題』TOUR10.13@大阪Shangri-La

わりと完璧主義のきらいがあるので、レポや感想を書く時は「一から十までちゃんと書かないと」という念に囚われてしまい、結局面倒になって一文字も書かないということが多いのですが、不完全でも忘れてしまうよりはマシだろうという方向に考えを改めたので、今後はライブの感想などをもっと頻繁に上げていきたいです。というあくまで意気込みだけ表明しておきます。まずは今日から。

 

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downy2年ぶりのツアー『無題』に行ってきました。フルアルバム『第六作品集』が9月に発売され、進化し続けるカッコよさにおののいたのがまだ1か月前というのがなんだか早いような遅いようなよく分からない感じ。ロビンさんがインタビューでこのアルバムのことを「氷の中に火がいるみたいな、燃えてるんだけど触れないみたいな、そういうイメージ*1」と仰っていたのがとても印象に残っているのですが、本当にその表現がぴったりと当て嵌まる、青い熱を放つアルバムです。

で、今日のライブですが、私にとっては2014年の"無題"ツアーぶりのステージだったので、丁度2年ぶりのdownyでした。いつも通り男女比は半々で年齢層はバラバラ。他のバンドだと服装とか雰囲気で普段他にどんなライブに行ってるのかとかうっすらと推測出来るんだけど、downyだけは本当に皆目見当がつかない。そういう色んな人たちがみんな共通してdownyを見に集まっているというのはなかなか面白い状況だなぁと思う。

ライブ全体のざっくりした印象としては、旧譜からの曲が多かったなという印象です。第五が発売された時のツアーが第五からの曲が多かったから余計にそう感じるのかもしれないけど、結局のところdownyはどのアルバムの曲もかっこいいので何の問題もないです。ひとつ悔しい点を挙げるなら第六で一番好きな"孤独旋回"が聴けなかったことが残念でならない。でも、"凍る花"、"檸檬"、"海の静寂"が聴けたのは嬉しかったです。多分"檸檬"だったかな?のベースがコントラバスだったことを生で見て初めて知ったんだけど、指さばきがとってもかっこよかったです。あとは毎回言ってる気がするけど、"曦ヲ見ヨ!"のドラムは何度見てもすごすぎて笑うしかなくなる。秋山さんのドラミングの粘つくような低音と白々しいまでの薄情な高音のコントラストにいつも眩暈がするほどクラクラする。downyのリズム隊、あまりにもさらっとあのド変態ド変拍子を弾きこなしてくるから自分の常識が狂いそうになるよね。裕さんの自由な変態(褒めてる)っぷりも相変わらず健在で、downyの楽曲をdowny足らしめる奔放なギターで飄々と時に熱っぽく旋律を彩っていました。あと彼のギターは本当にエロい。これは見たら・聴いたらすぐ分かる。"或る夜"のラスト、スポットライトが煌々と照らす中つづく裕さんのギターソロ(ソロというのか独立した曲なのかもうよく分からない)中にちらりとロビンさんの方を見やると、「俺らの裕、どや」と言わんばかりの満足げな微笑みを浮かべてらっしゃったのがとても素敵でした。MCも全部で3分くらいだし曲中のメンバー間のアクションもほとんど無いバンドだけど、メンバー同士の信頼感の厚さというのは随一のものがあると感じます。

そして2年という時の流れも手伝ってるのかもしれないけど、ロビンさんの歌い方が第六の曲以降かなり変わったように感じた。特に"海の静寂"で、拳をぐッと握って目を瞑り、祈るようにかつ叫ぶように歌い上げる姿を見て、あんなにエモーショナルに唄う人だったんだと新鮮に驚いた。ロビンさんの声って前までは(といっても復活後しか知らないのでなんとも言えないけど)、ひとつの楽器としての声というイメージが強かったんだけど、今回の第六はボーカルがかなり強く前に出てた印象がある。そのことはご本人も新譜発売時のインタビューで言ってたような気がするけど、それを実際にライブで実感として感じられたのは大きかった。ボーカルが強くないdownyも今回みたいに前に出てるdownyもどっちも好きだから、これからライブで二つの表情を見せてもらえるというのは単純に楽しみが増えてありがたい。

あと嬉しかったのはdownyの曲の中でも5本指に入るくらい好きな"弌"と、全く安心出来ないことで有名な"安心"が聴けたことです。まさかの2テイクあったのもライブらしくて良かった。15年以上前の曲を古臭さや懐かしさを全く感じさせることなくサラリと演奏してみせられるのはバンドの力量であり才能なんだと思う。downyを見た後は世界の彩度がグッと下がってしまってなんだか全部がハリボテみたいに見えてしまうよ、そんな風に感じるくらいに色と温度と風景と感情が凝縮されたステージなんだよ。

胎動とも呼べるような脈打つようなライブを見終え外に出ると、ヒューッと10月の冷たい風が火照った肌にぶつかってきて、downyの季節が来たなと思わず頬が緩んだ。また春が始まる前にどこかで見れるといいな。